人は健康な状態では抵抗力に満ちています。しかし体内バランスが崩れると抵抗力が弱くなり、病気につけ入る「スキ」を与えてしまいます。漢方では「気血水(きけつすい)」のバランスが乱れた時に病気が起こると考えます。「気」「血」「水」が互いに影響しあってバランスを保ち、体を動かし、頭を働かせ、心を安定させます。この「気血水」に乱れが生じると病気になると考え、どれがどのように乱れているかを探るのです。
「気血水」の働きは、西洋医学でいうと「神経・内分泌・免疫」に当てはめて考える事ができます。
「気」は、血と水を運ぶ役割をし、全身をくまなく巡らせる「自律神経系」。「血」は、栄養を運んだり、老廃物を押し流したりして体内環境の調節を行う「内分泌系(血液やホルモンなどを含めた体液系)」。「水」は、体に潤いを与え、ウイルスや細菌から体を守る「免疫系」に相当します。「気血水」がバランスのよい状態が、理想的な健康状態です。
「気血水」のなかで最も重要なのが「気」です。生体全体の機能を正常に保つためのエネルギーが「気」であり、生体内で生成された「気」が体内を巡り、生命活動が行われていると考えます。西洋医学的に見ると、気は自律神経の機能と自律神経が担当する器官、臓器の働きに相当すると考えられます。自律神経は交感神経と副交感神経からなっていて、消化器や血管系、内分泌腺などの機能を調節する役目です。また、生命活動を維持する食欲から消化吸収までのすべての機能に、気は関わっています。また、気には血や水を全体に巡らせるという大きな働きがあります。ですから、気の異常を放っておくと、血や水にも乱れが生じてしまいます。気の巡りが悪くなると、さまざまなトラブルが起こります。
気のトラブルには、気が逆流する「気逆(きぎゃく)」、気が滞る「気滞(きたい)、気鬱(きうつ)」、気力がなくなる「気虚(ききょ)」のタイプがあり、乱れている傾向を感じらたら早めに対処しましょう。
「血」は単に血液を指すものではなく、血の循環や血により現れる機能の総称です。血液の働きやホルモンなど、内分泌系の働きも含みます。血は気と共に全身を巡り、体内の微調整をしながら体のすみずみまで酸素と栄養を運びます。西洋医学的に見ると、血の働きは全身に血液や栄養素を配給し、血液中の老廃物を取り除き、ホルモン分泌の微調整をして全身の活動力を高める働きということになります。「循環器系・内分泌系」の機能の総称が血です。
血の巡りが滞った状態を「於血(おけつ)」、血が不足した状態を「血虚(けっきょ)」といい、異常をきたすと、脳梗塞、心筋梗塞など循環器系の病気をはじめ、出血傾向など血液疾患、月経異常などのホルモン異常、特に婦人科系の病気にかかりやすくなります。また、肝臓病などの内臓の病気でも、血の異常が起こる場合があります。
「水」は、生体を防御する機能と器官の働きに関係するものです。西洋医学的に見ると、水は皮膚や粘膜を丈夫にして外敵から身を守り、白血球として血と共に全身を巡り、体内に侵入した病原菌から体を守る役割になります。また、生体防御機能の要となるリンパ球は、水の一部であるリンパ液中に存在しています。リンパ球は免疫機能を担い、全身に張り巡らされたリンパ管の中を流れ、病原体という抗原に対して抗体と言うタンパク質をつくり、病原体を破壊し、生体を病原体から守るという重要な役割を持っています。その為、水に異常をきたすと「水毒(すいどく)」といい、感染症や膠原病などの自己免疫疾患にかかりやすくなります。また水が不足してしまうと、肌の乾燥や便秘、粘膜の乾きなどが起こります。