西洋医学と東洋医学はどこが違うのでしょうか?西洋医学では体を構成する細胞や臓器に何らかの異常が起きた時に病気になると考えます。さまざまな検査をして病気の原因を追究し、その結果から病名を決定。内科、外科、皮膚科など体を細分化して考えて、異常が起きている局部の治療を行います。
しかし、検査の結果、検査に異常が見つからない場合があります。すると病気とはみなされず気のせい、または不定愁訴(ふていしゅうそ)とされ、感じている体の不調は改善されないままになってしまうのです。
これに対して、個の医学とも言われる東洋医学では、体と心をひとつのものとして捉え、その人の体質や生活習慣、また食品添加物、電磁波、放射線、ウイルス、情報過多、睡眠不足などさまざまなストレスなど、いろいろな要因(原因)を考えていきます。そして、病気が起こすさまざまな体の反応に着目し、人の持つ治癒力を高めながら、心身のバランスを整える治療を行います。既製服ではなく注文仕立て服のように、個人の体にあわせた治療と言えます。
日本の東洋医学といえば「漢方医学」。漢方医学は日本に昔から存在した和法(わほう)に、中医学(中国)と韓医学(韓国)が融合し、日本で独自の発展を遂げた医学です。
代表的な治療は「漢方薬」。病院でも処方されます(感冒(風邪)=葛根湯というように、病名がついて処方が決まる)が、一般用の漢方薬の方が種類も剤型も豊富で、とても身近な存在になっています。自分の健康状態を把握し、その変化に気付いたら薬局で漢方薬を買い、自分で健康を管理する「セルフメディケーション」の時代に漢方は最適だと思います。また漢方医学というと、漢方薬だけの治療だと思われがちですが、漢方薬のほかに鍼灸や按摩、指圧、養生などさまざまな治療法があります。多方面から総合的に体をケアするのが本来の漢方医学なのです。
漢方医学が最も得意とする治療は、病気になる前の治療です。健康と病気の間には、「病気になっていないが健康ではなく、病気に向かっている状態」があります。これを漢方医学では【未病】と呼びます。
健康を火事になる前、病気を燃え広がった火事に例えると、【未病】は「ボヤ」の状態です。火事になると大量の水が必要ですが、ボヤであれば少ない量の水で鎮火できます。つまり、余分な薬を使わず、病因を摘むのが漢方医学で、そのためにも診断を重視します。
未病にも二段階あります。第一段階の未病は、偏った食生活や運動不足、ストレスなどの「生活習慣そのもの」です。ただし、まだ生活習慣の範囲なので、この段階で改善すれば、病気になることのリスクは低くなるでしょう。しかし、この第一段階を改善せずに過ごしてしまうと、未病の第二段階「境界線領域期」に入ります。体に異変を感じたり、検査の数値に異常が現れ「生活習慣病予備軍」になってしまいます。さらに放っておくと、糖尿病、脂質異常、骨粗鬆症など、いよいよ病気エリア突入。症状が重くなれば健康を取り戻すのに時間と費用がかり、生活にも支障をきたすでしょう。
未病にもいろいろあります。
●検査値に異常が見られないが自覚症状がある。
→頭痛やめまい、不眠など、自覚症状に悩まされているものの、検査結果に現れない。
●自覚症状はないが検査値に異常があり。
→本人に病気だという自覚症状がない。
●医学的には治療を終えたが、完治した感じがない。
→本人に完治感がない状態。手術や治療を施しても治ったと感じず、ただ病院では「治った」とされる。
このような【未病】には漢方医学は選択の一つではないでしょうか(病気は原因があっての結果であって、原因そのものは一人一人違う、治し方も一人一人違う)。